「食品の裏側」で60万部のベストセラーを記録した安部司氏が新たな本を出した。
題名は
「なにを食べたらいいの?」(新潮社)
安部氏は「食品の裏側」で食品添加物の危険を指摘したのだが、販売部数から考えると食品添加物のみならず食品分野全体の中で最も多く読まれた本となった。
同じ食品分野でベストセラーとなった「食べるな!危険!」でも30万部なので、「食品の裏側」がいかに売れているかがわかる。
いわば、日本人の食品に関する本の代表、
食品分野のバイブルと言ってもいいだろう。
ただその内容はというと、僕が再三指摘しているように、
重要な部分で
事実誤認があり、強い思い込みによって書かれた
偏った内容と言っていい。
皮肉な言い方をすれば、だからこそ不安を感じてる人々のハートに強く訴えるものがあったのだろう。
さて、新著の「なにを食べたらいいの?」
相変わらず食品添加物を批判するスタンスを維持しつつも、
前著とは大きくトーンが変わっている。
食品添加物の「おかげ」の部分を多く取り上げることにより一定のバランスを保ち、かつ消費者自身への批判がしっかり書かれている。共感できる部分は、「食品添加物は縁の下の力持ち」と表現し、人々が買い物をする時に選ぶ
「安い」「簡単」「便利」「美しい」「おいしい」を実現できるのは食品添加物のおかげである、とするところ。
さらに、消費者を
「意識は高く行動は低い」と表現。
誰もが「無添加がいい」といいつつ、無添加によって値段が高くなったり、日持ちが悪くなったり、色形が悪くなったりすることがわかると、やっぱり添加物入りを買う。
結局提供される食品に対しての批判精神は強いものの、自らは便利さを求めてすすんで添加物がたくさん入った食品を利用しているということ。
前著が食品メーカーがいかに消費者を騙して、危険な食品を提供しているかという主旨だったのと比べると、非常に大きな変化といえる。
ただ、一方食品添加物そのもへの批判も前著と同じように展開している。
最も気になるのが、食品添加物の危険性を指摘する時に
「〜〜〜との指摘も出ている」
「〜〜〜との研究結果がある」
ということが並べられていることだ。
これだけを読むと、いかに恐ろしいものか、という印象を受けるものだ。
しかし、これは意図的にそういった内容だけのものを取り出して書いているにすぎなく、「安全だ」という「指摘」や「研究結果」がはるかに多いのである。
科学者、研究者はそれこそピンからキリまでいて、中にはズサンな実験、著しい矛盾を持つものを発表して平然としている者もいる。
多くの科学者が認めている「知見」としては、食品添加物は完全とは言えないまでも、非常に厳しく毒性が調べられているため、許容数値以下での使用であれば問題ないということだ。
もちらん、現在の科学も決して完全ではないし、少数派が正しい場合もある。
著者が指摘するように、単品では問題なくても複合的に摂取した場合はとどうなるかわからない面はある。
しかしそれをいうなら、
天然物も複合的に摂取した場合の影響はより以上にわかっていない。
天然物は太古の昔から摂取しているから心配ないというなかれ。
現在摂取している「天然物」は時を追うごとに大幅に品種改良されている。
生育環境による変異のこともよくわかっていない。
ましてやそれらを摂取し続けて100年にどう影響が出るかもわかりようがない。
毒性が調べられている化学物質より、調べられていない天然物のほうが恐ろしいことは多くの科学者の一致するところだ。また、著者は食品添加物によって、本来甘ったるくて飲めないようなものがおいしく感じてしまう。
しょっぱくてマズイはずのものもおいしくなる、ということを指摘し批判している。
さらに、食品添加物によって
「味覚が壊れて、本来の味の良さがわからない子供が増えている」
「出来合いの食品が増え、親が調理に手を抜くために、親子関係が希薄になる」
などの問題点を指摘している。
確かに、言っていることは正しいと思うが、これは食品添加物のせいではない。
むしろ「おかげ」の恩恵を受けていながら、それを有益な方向に活用していないことが問題なのである。
著者もわかっていることと思うが、
日本人の食生活がおかしくなっているのは食品添加物のせいではなく、我がままで楽を求める消費者のせいである。
食品添加物は、取らないで済むものは取らないに越したことはない。
しかしまさに人々のニーズに応えることによってその消費量が増えたということは、恩恵の部分が大きいということは言うまでもない。
ただ感情的に批判だけして、自分は被害者のようにしているのではなく、食品添加物の功罪両面をよく知って自らがどうするか冷静に判断することが必要と思う。
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